個人事業主として仕事を受け、報酬を得てきた人も、事業が成長していけばいずれは法人化を考えることになります。そこで今回は、法人化のメリット・デメリットについて説明します。
法人化のメリット
節税
個人事業主が納める所得税には、超過累進課税という制度があります。つまり、所得が多ければ多いほど、所得税率が高くなります。平成27年分以降、最大の所得税率は45%。住民税と合わせれば55%です。それに対して、資本金1億円以下の中小法人であれば、法人税は約4割。所得税よりも法人税のほうが低くなります。
事業主本人も給与所得控除が認められる
法人化すると、事業主も会社から給与を受け取る立場になります。それによって、給与所得控除が認められます。
消費税の免税事業者になれる
資本金1千万円未満の法人の場合、設立から2年間は消費税の免税事業者になれます。
社会的信用が高い
個人が相手では取引をしないという会社も多くあります。また、経費も会社名義で払ったほうが認められやすくなります。
個人番号(マイナンバー)を通知する手間が省ける
マイナンバー制度の開始により、税務署に提出する支払調書にも「個人番号または法人番号」の記入が必要となります。そのため、個人事業主が支払を受ける場合、自分のマイナンバーを支払者に通知しなくてはなりません。その際に本人確認のため「個人番号カード」などを提示することが義務付けられています。
法人であれば法人番号が発行されます。これはマイナンバーとは異なり、原則として公表され、誰でも自由に利用できます。
つまり法人の場合、支払者に番号を通知する手続きを省略することができます。
法人化のデメリット
利益0円でも年間7万円を払わなくてはいけない
法人の場合、利益が0円であっても法人住民税の均等割分があるため、最低でも年間7万円を支払う必要があります。
役員報酬が1年間固定になる
社長であっても、報酬金額の増減は年度始めにしか行えません。入金が多い時期に多めにお金を引き出しておくといった柔軟な対応はできなくなります。
交際費の上限が決められている
中小企業の場合、年度内で800万円もしくは飲食費の50%までしか交際費にすることはできません。
個人事業主の場合は交際費の上限はありません。
確定申告の申告業務が複雑になる
法人の場合は申告業務が複雑になるため、自分で行うことが難しくなります。税理士に依頼することになれば、その分の費用がかかります。また、税理士に依頼する場合でも最低限の知識は必要なため、本業以外のことを勉強する時間が必要になります。
法人化のタイミング
法人化のメリットとデメリットについて見てきました。では実際、個人事業主はどういったタイミングで法人化を検討するべきなのでしょうか。
ケースによって様々ですが、一般的には課税所得が700万円を超えたら、法人化したほうが税金は安くなると言われています。利益が500万円程度になった段階で専門家に相談してみることをおすすめします。
一方、取引先の要請により、税金以外の理由で法人化される事例も多く見受けられます。